ロダンの手
- 小林洋子ピアニスト
- 2019年8月24日
- 読了時間: 2分
最近は、リハビリ日記というより、私のこの右手とどう向き合っていくか、どう付き合っていくか、
ということに重きを置いている。
脳神経外科手術以外は全てやってきた。
医師の指導の下、私に合っているリハビリ方法を複数選択し、現在自分でそれを続けている。
前にも記したれど、私に合わなかった方法一つご紹介。
ジストニアに苦悩中の、ある男性ピアニストが、ある日たまたまロダンの手の彫刻の写真を見た。
もちろんそれまでにはいろんな治療法、リハビリも続けてきていた。
手の彫刻のことなど忘れ、その後いつものようにリハビリに取り掛かろうとピアノの椅子に座った。
ピアノを弾き始めたら、それを聴いていた彼の奥さんが駆け寄り、「あなた、治ってるわよ!」と。
彼も驚いたという。5年もの苦悩の日々、しかしある日突然完治してしまったのだ。
脳神経に、ロダンの手がどう作用したというのか。
ロダンの健勝な手のイメージが、脳を上手く刺激したとでもいうのだろうか?
世界には、まぁこういった例もある訳だから、試してみない手はないということで実行してみた。
残念なことに、この治療法は私には全く合わなかった。
気持ち悪くなるのである。写真を見ていると、自分の症状がだんだん悪化していくイメージがある。
急いでその写真は破いてゴミ箱に捨てる。
ところがゴミ箱に入れてもまだ気持ち悪く、シュレッダーにかけて建物一階のごみ置き場まで走った。
音楽家のジストニアと診断され、音楽を止め他の仕事に就かざるを得なかった人もいれば、ある日突然起きたら治っていたという人もいる。何年も治療を続け、ある程度治ったけれどプロとしては通用せず、ある程度の年齢になっていれば、転職といっても特に難しい。それに精神的ダメージのほうが推測の域を超えるだろう。
私のように何とか復帰できた人も、常に不安は付きまといます。
LIVEの日、朝起きたらまた突然症状が悪化していた、等という恐怖は全く無いといったら嘘になります。
そんなことにならないように、時期によってはLIVE本数を考慮したり、何よりもリハビリも含めての練習はこれからもずっと続きます。自分の手ではないようなこの手を、何とかしたい。

Comments